このページでは、デジタルマイクロスコープで無色透明な対象物を観察する際に重要なテクニックとなる「微分干渉」について詳しく解説しています。微分干渉観察の方法を理解して、デジタルマイクロスコープの導入メリットを最大化するためにご活用ください。
微分干渉とは?
観察対象の厚さに応じて光のコントラストをつける
微分干渉とは無色透明な対象物や、観察用に染色されていない対象物などを観察する際に、光の物理特性を応用した技術によって対象物の視認性を高める観察手法です。
例えば光学顕微鏡で微少な細胞を観察する際、細胞核や細胞壁などを染色して、通常は透明な細胞の視認性を高めることがあります。しかし、これではどうしても対象物を自然な状態で観察することができません。
微分干渉観察を使うことで、微少かつ透明な細胞でも変質させることなく視認性を高めて観察できるというメリットがあります。
微分干渉観察と撮影画像の特徴
対象物の厚みによってコントラストがつく
微分干渉観察では、対象物の厚みの差に合わせてコントラストが生じます。そのため、明暗によって立体感が強調されることが特徴です。
影の付き方に方向性が生まれる
微分干渉は光を利用して画像にコントラストをつける技術であり、微分干渉観察で取得される画像の中では、対象物に特定の方向性を持った影が生じます。
対象物にハロー(光環)が生じない
対象物の視認性を高める手法には、微分干渉観察だけでなく「位相差観察」というものもあります。
位相差観察の場合、対象物の周りに光の輪のような明るい部分(ハロー)が生じますが、微分干渉観察ではハローが生じないこともポイントです。
微分干渉の原理と微分干渉観察の仕組み
光の進む距離の違いを利用した観察手法
透明な物体を肉眼で観察しても、全ての場所が同じように見えるせいで、凹凸をはっきりと確認できないことがあります。
しかし、現実に光が物体を通過(透過)する際は、全ての場所で等しく真っ直ぐに光が通っているのでなく、厚みと屈折率によって進路を変えながら透過しているという点が重要です。つまり、対象物の厚みや屈折率によって光の進む距離に違いがあるということです。
微分干渉は、特殊なプリズム(微分干渉プリズム)によって、光が対象物を透過する際の距離ごとに対象の画像を分解・取得し、さらにそれぞれの画像を、コントラストを変えて合成することで凹凸や厚みの違いを立体的に再現します。
微分干渉観察の注意点
微分干渉観察は利用価値の高い観察方法ですが、あらかじめいくつかのポイントに注意しておかなければ正確な観察像を得ることができません。ここでは微分干渉観察の注意点について代表的なものを紹介します。
サンプルやレンズの汚れを取り除いておく
微分干渉観察ではサンプルを透過した2本の偏光を観察してイメージングを行いますが、サンプルやレンズに汚れや傷が存在すると、それらにもコントラストが発生してノイズとして視覚化されてしまいます。
そのため、そのようなノイズが発生した場合、サンプルの調整方法を見直したり、適切なレンズクリーニングを行って汚れやホコリなどを除去したりすることが大切です。
また、レンズの傷などを見つけた場合はメーカーなどへ相談してください。
サンプルにプラスチック容器を使わない
観察対象のエリアにプラスチック容器やプラスチック製品があると、プラスチックそのものが偏光を持つため、正確な微分干渉観察を実行することができません。そのため、微分干渉観察では必ず容器やフタにガラス製のものを使用してください。
コントラスト(陰影)に方向性がある
微分干渉観察では偏光が分離された方向に対して、平行な方向の変化だけがコントラストに変換されて観察像として視覚化されます。そのため、対象物を微分干渉観察した場合、一定方向にコントラストが発生することになります。
コントラストの方向は一定になるため、観察を続ける上でサンプルの見え方を変えたい場合、ステージごとサンプルを回転させることが必要です。
対物レンズの種類によってDICプリズムが異なる
対物レンズの倍率とDICプリズムの種類が合致していないと微分干渉観察は行えません。