このページでは、生物用デジタルマイクロスコープの選び方について詳しく解説しています。生物観察を目的としたデジタルマイクロスコープの導入を検討されている方は、ぜひ適切な機器選びを行うための参考としてご活用ください。
生物用デジタルマイクロスコープを選ぶポイント
生物用デジタルマイクロスコープといっても、生物を対象とした観察に限定されているデジタルマイクロスコープを選ぶのでなく、実際には様々なデジタルマイクロスコープの中から目的とする生物観察に適した製品を選ぶことになります。
ここでは生物観察に適したデジタルマイクロスコープを選ぶポイントや注意点を解説します。
倍率(視野範囲)
デジタルマイクロスコープの倍率は必ず目的とする観察対象に合わせて選択することが必要です。
生物用デジタルマイクロスコープや生物観察を選ぼうとしても、実際には微生物の観察を行うことがあれば、昆虫や植物などを観察対象として選ぶこともあるでしょう。そのため、倍率についてはまず自分がどのような対象物を観察したいのか、何を目的としてデジタルマイクロスコープを導入したいのか、といった条件を考えて決めることが欠かせません。
なお、高倍率になるほどデジタルマイクロスコープの製品コストは高まっていくことが一般的であり、必要以上に高倍率のデジタルマイクロスコープを選ぶと予算面で問題が発生する可能性があります。かといって、対象物の観察に対して不十分な倍率しか実現できなければ、そもそもデジタルマイクロスコープを導入する意味がありません。
また、観察可能な範囲(視野)についても検討することが大切です。
一般的に高倍率になるほど視野が狭くなり、観察・撮影できる範囲が縮小されます。しかし観察対象によっては全体像を把握したい場合もあり、なるべく広い視野を獲得することが望ましいこともあります。
デジタルマイクロスコープでは画像連結機能など、複数の視野の画像を一枚につなげて合成できる製品などもあり、単に倍率で選ぶだけでなく機能面も合わせて考えるようにしてください。
作動距離
作動距離とはデジタルマイクロスコープのレンズの先端から、観察対象の表面までの距離のことです。光学顕微鏡の場合、倍率を変更する際にレンズの位置を調節するために、対象物の厚みと作動距離の関係が問題になることもありますが、基本的にデジタルマイクロスコープではズームレンズが採用されており、作動距離は常に一定となっています。
ただし、製品や観察対象によって条件も異なるため、実際には購入前に必ず仕様書や実物を確認します。
表示速度
デジタルマイクロスコープではデジタルカメラで対象物を撮影し、それをパソコンの画面や手元のモニターなどに表示させるというシステムがポイントです。
例えばリアルタイム観察を行っている時に表示速度が遅ければ、実際に観察している部位と画面に表示されている部位にズレが生じるため、違和感を抱くこともあるでしょう。また、高画質な画像を取得した場合、データ量が大きくなって表示速度が遅くなることもあり得ます。
表示速度はデジタルマイクロスコープやパソコンの性能と、取得画像の画質やデータサイズなどによって影響されるため、自分にとってバランスの良い設定を確認することが先決です。
拡大観察時に取付・加工など作業が必要か
拡大観察を行いたい際に、専用のレンズや装置が必要かどうかもチェックすべきポイントです。
もしもマクロレンズなどを取り付けなければならないような場合、作業の手間が増えて工程が複雑かしてしまうかも知れません。また、専用の器具やレンズなどを別途購入しなければならない場合、想定していたよりもイニシャルコストが高くなる可能性もあります。
スムーズに作業を進めつつ、コストパフォーマンスを高めるためにも、作業で必要な手順や器具などについて確認しておきましょう。
操作性
事前に操作性を確かめることはデジタルマイクロスコープを導入する上で不可欠です。
デジタルマイクロスコープを導入する目的の1つに、高品質な観察画像を効率的に取得したいというものもあるでしょう。一方、操作時に複雑な設定が必要であったり、手間のかかる作業を行わなければならなかったりすれば、結果的にミスが増えて作業効率が悪化し、取得画像の品質も劣化しかねません。
スタンドアロンシステムでの検査
スタンドアロンシステムで観察可能かどうかも気をつけておきたいポイントです。
デジタルマイクロスコープをパソコンなどにつなぐ必要がなく、それ単体で観察を行える場合、観察したいと思った時にスムーズな作業が可能です。
照明の選択
光学顕微鏡であれデジタルマイクロスコープであれ、対象に光を当てて観察する以上、照明の選択は重要な課題となります。
例えば液中の微生物や透明生物の体内の観察などであれば「透過照明」での観察が一般的となるため、それに対応しているかどうかは必ず確認しておきます。また、側射照明や同軸落射照明、偏光照明など複数の照明に対応していたり、照明レベルを任意に調整したりできるLEDライトを備えている製品もあり、コストや機能のバランスを考慮しながら比較検討を行ってください。
生物用デジタルマイクロスコープを用いるシーン・導入事例
ここでは、生物用デジタルマイクロスコープを実際に導入して活用した事例をご紹介します。デジタルマイクロスコープをどのように活用し、どんなメリットを得られたのか、具体的に把握しておきましょう。
植物ホルモンの観察(広島大学)
広島大学理学部生物科学科植物生理化学研究室では、デジタルマイクロスコープを使って植物ホルモンの観察を実施しました。
従来の観察では蛍光実体顕微鏡が活用されていましたが、写真撮影の利便性を考慮して同研究室ではデジタルマイクロスコープを導入しています。
デジタルマイクロスコープは被写界深度が深くて観察視野も広い上、同製品は画像連結機能が標準仕様となっており広い視野で対象物の拡大画像を得られることがポイントです。また、マウスで照明レベルを調整できるため、水を張ったシャーレなど光を反射させやすい対象物でも観察しやすいことが強みです。
まとめ
生物用デジタルマイクロスコープといっても、実際には目的とする観察対象やデジタルマイクロスコープを設置する環境などの条件に合わせて製品を選択することが、導入失敗のリスクを減らすために必要となります。
基本のチェックポイントを意識しつつ、実際の購入時はメーカーの担当者に相談して冷静かつ十分に比較検討するようにしてください。