このページでは、デジタルマイクロスコープを選ぶ際のポイントや選定時に注意すべき点などについて様々な方向から解説しています。デジタルマイクロスコープの選び方について知りたいと思っている方は、ぜひ参考としてご活用ください。
デジタルマイクロスコープの選定時の注意事項
デジタルマイクロスコープの用途と機能
デジタルマイクロスコープを導入しようと考えた時、何よりもまずどういう目的でデジタルマイクロスコープを利用したいのかを明確にした上で、その意図に応じた機能や性能をチェックすることが必要です。
デジタルマイクロスコープの用途に関わる機能としては、大きく以下の2つがあります。
観察機能
観察機能とは、文字通りデジタルマイクロスコープで対象物を観察するための機能や性能です。例えばどれだけ小さいものを観察できるのか、どれだけ幅広く色彩を識別できるのか、どれだけ暗い場所でも見やすく確認できるのかなど、観察機能に関して正しく理解することは欠かせません。
デジタルマイクロスコープの観察機能がそもそもニーズに適していない場合、マイクロスコープを導入する意味が失われてしまうため、観察機能を詳しく確かめることが大切です。
計測機能
デジタルマイクロスコープの中には、観察している対象について長さや面積、あるいは対象物までの距離(奥行き)などを自動的に計測してくれる機能を備えたものもあります。
単に対象物の状態を視覚的にチェックしたいというだけであれば、そこまで計測機能にこだわる必要もないかも知れません。しかし、観察した内容を保存したり、記録したデータを活用したりすることを考えれば、計測機能の有無や精度を確認することも重要です。
なお、対象物としてどのようなサイズや形状に対応しているのか、円形や多面体でも計測可能かなど、実際に計測対象となるものに照らし合わせて考えるようにしてください。
デジタルマイクロスコープを選ぶ3つのステップ
具体的にデジタルマイクロスコープを選んでいく流れを3段階に分けて解説します。
なお、デジタルマイクロスコープを導入する理由や目的、ニーズなどについてはすでに各自で明確化できていることを前提としています。導入目的が明確化されていない場合、条件を選ぶこともできませんので、先に用途や導入理由を具体的にまとめておきましょう。
【ステップ1】倍率・作動距離(焦点距離)・表示速度を考える
倍率や作動距離(焦点距離)、表示速度といった性能や仕組みはデジタルマイクロスコープにおける「基本システム」となります。
倍率
例えば、デジタルマイクロスコープの倍率はデジタルカメラの性能やモニターの性能などによって一定の範囲で設定されています。その倍率の範囲内で目的の対象物を十分正確に観察できなければ、デジタルマイクロスコープを導入する意味がありません。
なお、デジタルマイクロスコープは顕微鏡と違って絶対的な倍率が標準化されているのでなく、範囲内で任意の数値を調整できることが通常です。ただし、カタログスペックとして有効とされている倍率の範囲でも、上限・下限付近では見え方が変わってしまう恐れもあり、必ず実際の画面を確認するようにしてください。
作動距離(焦点距離)
レンズと対象物との距離を指します。メーカーや製品によって、倍率を変えた時にレンズと対象物との距離が変わるものや変わらないものがあり、実際の使用環境や観察する対象物などの条件に合わせて選択することが必要です。
なお、一般的には高倍率になるほど作動距離(焦点距離)が小さくなりますが、レンズへ対象物が完全に接してしまうと観察困難になったり、対象物へダメージを与えたりする恐れもあるため注意します。
表示速度
カメラで撮影している画像や映像をモニターで表示する速度が遅ければ、スムーズな観察ができない場合もあります。またハンディタイプのデジタルマイクロスコープなどで表示速度が十分でない場合、カメラを動かして観察しようとすると残像が生じて正しい像を見られない場合もあるため注意が必要です。
【ステップ2】解像度を考える
基本システムを決めれば、次にデジタルマイクロスコープの解像度を考えます。
解像度の高いカメラほど高画質な撮影をできるため、画像として拡大した時にも細部までチェックすることが可能です。ただし、カメラの性能が高解像度であっても、表示するモニターの解像度がそれに対応していなければ、目に見える画像は低画質になってしまうため注意してください。
モニターだけで画像を観察するのか、高解像のデータとして別の目的で使用するのかなど、条件に合わせた選定が重要です。
なお、解像度が高くなるほど画像のデータサイズも大きくなって、転送や表示、保存に時間がかかるため、解像度を決めてから改めて表示速度や使用感をチェックすることもポイントです。
【ステップ3】照明を考える
デジタルマイクロスコープのカメラ性能や解像度がどれだけ優れていても、光が適切に当たっていなければ対象物を正確に確認することはできません。
そのため、基本システムや解像度を決めた後は、改めてそれらの性能を正しく発揮できる照明装置について考えることが必要です。
デジタルマイクロスコープではリング照明や同軸照明、側射照明、透過照明、ローアングル照明(暗視野観察)といった様々な照明システムが採用されています。
どのような照明が適しているかは、対象物を確認する環境や対象物の内容、観察する角度などによって異なるため、実際の使用状況を想定した上で比較検討することが肝心です。
なお、照明の当たり方やライトの色によって対象物の見え方(色彩)も変わってしまうため、そちらについても確認するようにします。
検査ラインでの活用に適したデジタルマイクロスコープ
製造過程において、特に検査ラインでデジタルマイクロスコープを活用したいと考えた場合、どのようなデジタルマイクロスコープを導入することが賢明な選択なのでしょうか。
ここでは特に検査ラインへ適性を持ったデジタルマイクロスコープについて解説していますので、それぞれのデジタルマイクロスコープの特徴を比較検討していきましょう。
ハイビジョン マイクロスコープ
ハイビジョン マイクロスコープとは、文字通りフルハイビジョン対応のデジタルマイクロスコープです。高解像度の画質とスムーズな画像表示が両立されているハイビジョン マイクロスコープなら、次々と流れていく検査ラインでもしっかりと製品について判別することができます。
ただし、HDMI端子を有するフルハイビジョン対応モニターが必要です。
オートフォーカス マイクロスコープ
オートフォーカス マイクロスコープは、製品へのピントをカメラが自動的に調節してくれるデジタルマイクロスコープです。スピーディにピントを自動調節してくれるため、流れの速いラインでも正確に検査することが可能となっています。
なお、モニター直結タイプの場合、画像の保存方法や媒体が限られているというデメリットもあります。
ビデオマイクロスコープ
ビデオマイクロスコープであれば、画像でなく映像で検査ラインを撮影することが可能です。付属機器なども色々と展開されており、カスタマイズ性にも余裕があります。
一方、テレビモニタの走査線に画質や解像度が依存するため、ハイビジョン デジタルマイクロスコープやオートフォーカス マイクロスコープと比較すると画質がやや劣ります。
選び方をもとに用途に合ったものを選ぼう
デジタルマイクロスコープを選ぶ際は、そもそもの目的や対象物を定めた上で、それらに適した製品性能やシステムを選定することが大切です。
そして、カタログや使用条件などから候補のデジタルマイクロスコープを選んだ後は、改めて実際の使用環境にもとづいたシミュレーションを行い、得られる画像や計測データが十分に満足できるものか再確認することも欠かせません。
デジタルマイクロスコープは製品によって高額になるため、導入後にこんなはずではなかったと後悔しないためにもきちんと選定することが肝心です。